準備
今回は坂柳が本格登場します。意外と丁寧語で喋る女性は書くのが難しいので原作と比べると口調が変わってしまっているかもしれませんが、それでも大丈夫だよって人はゆっくり見ていってください。
———————————————
「桐生くん!ちょっといいかな?」
教室を出てすぐに同じクラスの中から呼ばれたのだからクラスメートから呼ばれたのだろうと振り返ってみると、いかにも好青年というようなクラスメートがそこには立っていた。その隣にはポニーテールをしたこれまた可愛い女の子も立っていた。
「ええっと...さっきの自己紹介の時に前に出ていた...」
「僕は平田 洋介だよ。さっきも話したけど、サッカーが好きで部活もするつもりだよ。僕は下の洋介と呼ばれることが多かったから桐生くんも気軽に話しかけてもらって大丈夫だよ。」
話し方からも爽やかな様子が滲み出ている。たしかに多くの女子たちが平田のことを話していた理由が分かる。こうして一人一人話しかけに来るあたりも人気に繋がるのだろう。俺には出来ないことだ。
「それじゃあ、洋介よろしく。俺は桐生司だ。特にスポーツで好きなものはないけど、体を動かすのは好きだ。あとは本を読むのも好きだな。特に呼ばれていたあだ名なんかはないから基本は好きに呼んでくれて大丈夫だ。」
あまり人と話すことに慣れていない俺は少し高圧的になってしまっただろうかと不安に思っていると特に気にしてないようで安心した。
「司は体を動かすのが好きなんだ。なら一緒にサッカー部に入らないかい?」
早速部活に誘われた。たしかに俺は体を動かすのは好きなのだが、部活などでしたいというわけではない。たまに動かす程度のことが好きなので丁重に断っておく。洋介は少し残念そうな顔をしていたが仕方ないと諦めていた。
そうしていると隣にいたポニーテールの子が話しかけてくる。
「桐生くんはこの後暇かなー?」
「とりあえず買い物に行こうかなって思ってるから、用事があるんだよね...ごめんね」
「そっか〜突然聞いちゃってんごめんね!」
話し方が明るくて快活な女の子だと思った。確かこの子は軽井沢さんだったような...そのカリスマ性ですでに1つのグループのリーダーになっている人だから人脈は広そうだ。
「そういえばお互いに初めて話すのは初めてだったよね。私は軽井沢恵だよ!これからよろしくね〜」
「それじゃあ改めて、桐生司だよ。これからよろしく。」
「せっかく話すようになったんだから桐生くんも連絡先交換しない?」
女子の方から連絡先を交換しないかと言われることはやっぱり嬉しい。自分としてもいつまでも真っ白な連絡先だったら虚しいため、交換してもらう。
「ありがとう!平田くんも一緒にしておかない?」
軽井沢さんは平田にも聞いて連絡先を交換していた。なるほど、俺と交換することによって、平田とも交換しやすくしていたのか。なんだかそんなことを考えていると虚しくなって来た。少しでも女の子と交換できたことに嬉しくなっていた自分が恥ずかしい...。
「司も交換しないかい?」
平田は俺にも交換しようと誘ってくれた。その目的が同情か分からなかったが、嬉しかった。 このまま一人だけ取り残された雰囲気にされたらたまったものではないから...。
「それじゃあ僕たちはこのあとカラオケに行くから司もまた明日ね!」
「またね〜」
そういうと二人は先に教室から帰ってしまった。遅れてしまったが自分も行く場所があるのだから行こう。早めに準備は終わらせてしまって明日から始まる用事に備えておきたい。
そう思ったので、足早に俺も教室を出たのであった。
とりあえず生活に必要な食材を買い揃えるためスーパーを目指して歩いていたが、スーパーは寮の近くにあるらしく少し距離があるようであった。最初にある場所は行こうと思う時は長く感じるものだが、長いなと思っていた。それもそのはず、この高度育成高等学校は町一つが敷地内に存在しているためとても広大である。さらに今日は学校初日のため配布された荷物も多く、カバンも重たかったため、疲れを感じ始めていた俺は、近くに見つけたカフェに入り休憩しようと思い、店内に入った。
店内に入って空いている席に座ってメニューを見てみる。大体の商品はおよそ150ポイントほどであった。思っていたよりも安く、ちゃんと制限かけておかないとポンポン使ってしまってポイントを無くしてしまいそうだ。やはり来月も必ずしも10万プライベートポイント振り込まれるとは言われていなかったため、しっかりと考えて使わなければいけないな。
そんなことを考えながらとりあえずコーヒーとミルクを頼んで、持ってきていた小説を読んでいると、頼んだコーヒーが届く。
ミルクを疎らにかけてから飲んでみる。絶妙に甘い部分と苦い部分が混じり合って美味しい。人間の舌は均一に混ぜられたものよりも、適当に混ぜているものの方が美味しさを感じやすいと聞いたことがある。それもあるのだろうが、本当に美味しい。雰囲気も良く、定期的にここに来ようかななんて考えていると店員さんに相席でもよろしいですかと聞かれる。
俺は特に相席を気にするよなタイプではないので、いいですよと伝える。すると、店員は謝辞を言って、入口の方向へと向かっていく。誰がここにきても知り合いではないだろうため、相手を機にする必要もない。そのため、小説に再び目を落としていると、コツコツッと何かものがなる音が鳴っていた。
その音が気になったので小説から目を離し、確認してみると、そこにいた人物は見知った人物であったのだった。
「あなたはDクラスの桐生くんというのですね」
目の前の少女は面白い物を見つけたという顔でこちらを向いていた。とりあえず少女は俺と同じコーヒーを頼むとこちらに自己紹介を求めた。普通自己紹介は自分からするものでは?とも思ったが後で聞けばいいだろうと軽く説明した。
カフェの中で喋るのは如何なものかとも思ったが、ここでは大声でなければ喋っても良いらしい。そのため、他にも喋っている人達もいた。
「私も自己紹介をしなければいけませんね。私はAクラス所属の坂柳有栖と申します。このように杖を持って歩いていますのは先天性疾患を持っていますので。趣味はこうしてコーヒーなどを飲むことなどですね」
ようやく自己紹介をしてくれた。思っていたが言葉遣いがとても綺麗だな。同い年ならばもっと砕けた話し方をしてくれてもいいのにと思いながら聞いていた。それにしてもやっぱり綺麗な子だな。背が小さくて人形みたいだ。
「どうされましたか?まじまじと見られますと、少し気になりますが...?何か変な点でもありましたか?」
「い、いや先天性疾患を持っていると大変だな...って思っていたんだ」
「へぇ.........嘘ですね。あなたは何か別のことを考えていらしゃいましたね。嘘はいけませんよ」
どうやら嘘だとバレていたようだった。ここで嘘を重ねても坂柳の印象を悪くするだけだろうから正直に話しておく。
「嘘だと分かってたのか。嘘を見抜くのが上手なんだな。」
「はい。その方の行動を見ていれば嘘をついていると分かるものですよ。先ほど桐生くんの動作を見ていますと、目線が右上に向いていましたし、何よりまばたきの回数が大きくなっていました。これらは嘘をついている時に人がとってしまう行動ですから覚えておくと得だと思いますよ」
「そんなに態度に出ていたのか。それじゃあバレバレってわけだ。」
「そうですね。さて、何を考えていらっしゃったのですか?嘘をついてもバレますので正直に言ってくださいね?」
坂柳が笑いながら言っているが、半ば脅しのようなものだ。ここて嘘をついても坂柳にはバレてしまうため、ここは正直に言っておく。
「実はだな...恥ずかしいのだが坂柳って可愛いだろ?そのことについて考えていたんだ」
それを聞くと坂柳は少しだけ顔を笑わせて喋る。
「それは言ってもらえて嬉しいですね。まさかそのようなことを考えられているなんて思ってもいませんでした。」
「こんなことなんで恥ずかしくてあまり言いたくなかったんだがな。嘘をついたらまたバレてもっと言いにくくなると思ったから言わせてもらったんだ」
「ふふっ、確かに嘘をついていてもバレていたでしょうね。これをネタにして脅迫してみるのも悪くないかもしれませんね」
坂柳は笑顔で話しているが、話している内容的を考えると苦笑いをしていることしか出来なかった。
その後もしばらくクラスのことなどを話していると、すでに日は暮れ始め、街灯が灯り始めていた。
「あら、こんな時間まで話してしまいましたね。今回はお話に付き合ってもらいましてありがとうございました」
坂柳は丁寧なお礼をして、杖をつきながら立ち上がる。時刻を見るとすでに5時30分をまわっていることから1時間くらいは話をしていたことになる。これ以上ここにいたら、家での準備も出来ないため俺も立ち上がって坂柳に礼を言う。
「いや、こちらこそ話し相手になってくれて助かった。またこうして話せるといいな」
「ええそうですね。それでしたら連絡先を交換いたしませんか?私の見立てではあなたは相当切れ者のはず。それこそなぜDクラスに所属しているのか不思議なほどに」
「切れ者だなんて言ってもらえて嬉しいが、俺は凡庸な生徒だよ。坂柳がいいなら俺も連絡先を交換しても大丈夫だがどうだろうか?」
「はい。私から提案させてもらいましたので全く問題はありません」
こうしてAクラスの女子である坂柳の連絡先を交換した俺は寮まで共に帰ると別れ、スーパーへと向かった。そこで先ほど連絡先を交換する時に言われた一言が気になっていた。
「それこそなぜDクラスに所属されたのか謎なほどに」
クラス分けはランダムではないのだろうか?何か具体的に決まっているのだろうか?何かまだ俺が知らないことを彼女が知っているなら、彼女から聞いてみるのもいいなと思い、近くにあった安売りの肉を取っていた。
Bạn đang đọc truyện trên: Truyen247.Pro