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図書館にて


ここ最近は急に寒くなっていますが皆さんは大丈夫でしょうか?作者は風邪を引き、ダウン状態です...
さて、今回少々文字数が少なめです。
ところで、この小説のタイトルは『違うクラスの女の子に目をつけられたんだが』ですが、他にも一ノ瀬なども追加した方がいいでしょうか?活動報告のところにアンケート置いておくので、是非よろしければご協力をお願いします。
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部活動紹介が終わり綾小路や池たちと別れた桐生は学校付属の図書館へとやってきていた。すでに結構な時間が経っているため生徒たちの姿は校舎の中には少なく、疎らになってきていた。さらに図書館ともなると、さらに人は少なく中にいる人は数人程度となっていた。
 
それにしても大きな図書館だ。何冊蔵書されているんだろうか。
 
ここ高度育成高等学校は政府からの支援を受けている学校であるため、多くの施設が最新鋭に整えられている。そしてこの図書館も並の高校とは比べ物にならないほど大きな図書館であった。
 
これだけの本があると好きな作品を読むだけでも卒業まで来てしまいそうだな...学術書から世界の小説、レポートに使えるような資料までありとあらゆる本があって本好きにはたまらない施設だな。
 
桐生は本を読むのが趣味であるので、図書館に来ると少しテンションが高くなるタイプであった。実際今も普段に比べてテンションが高めであった。とは言っても図書館では静かにはしなければならないので、口には出していなかったが、桐生の足取りを見ていると普段よりも気分が高まっているのが分かった。
 
さて、何を借りようかな?これだけあると意外と悩んでしまうものだな...ってやべ、閉館時間まで30分切ってしまってる...早く決めないと。
 
少しだけ本のタイトルを見る速さを速くして、本棚を見て回っていると、少し先のミステリーの小説が置かれているゾーンに本を本棚へと戻そうと躍起になっている女子生徒が目に入った。少し見ていると、あと少しで戻すことが出来そうなのだが、あと少し届かなくて苦労しているようだ。どうやら本を取り出すのは出来たようだが戻すのは出来ない高さのようだ。
本人もあと少しで戻すことが出来そうであるため、ステップ台を取ってきてまで戻そうとせずに、自力で戻そうとしていた。
誰しもが経験しそうなことで、自分もあと少しならわざわざ取りに行かずああやって四苦八苦するだろうな...と考えていると、女子生徒の足がプルプルと震えてきていた。なんだかこのまま黙って見ているだけというのも可哀想なので手伝ってあげることに桐生はした。
 
「届かなくて困ってるなら助けようか?」
 
突然話しかけられたことに少し驚きながらこちらの方を少女は振り返った。女子生徒は声を出さなかったが、こくっと首を縦に振ったので桐生は本を借りて本棚へと戻す。桐生もそこまで高くない方ではあったが、本を戻すには十分であったため、苦労することなく戻すことができた。
 
「ありがとうございます。本が届かなくて困っていましたので助かりました。」
 
「いや、届きそうで届かない時は困るから助けたのは当然だよ。」
 
横からしか見ていなかったためあまり分かっていなかったが、感情があまり顔に出ていないがふわふわとした雰囲気を持っていて可愛らしい人だった。
 
「ところでここにいらっしゃるということはミステリーなどに興味があるのでしょうか?」
 
「確かに興味はあるが、特に何か読むものを決めていたわけでもなく歩いていたんだ。そしたら時間もなくなってきて困っていたところなんだ。そこに君が困っているのを見つけたんだ。」
 
「そうでしたか...それでしたら...」

そう言うと、先ほど本を戻すのに苦労していた本棚の方へと向き、一冊の本を取り出した。
 
「何を読むのか悩まれているならこちらの本『死の接吻』などがオススメですね。展開が二転三転とする面白さがたまりませんし、何より人間描写の素晴らしさを感じとれる作品で是非とも読んでもらいたいですね。他にもこちら、『誰の死体?』をオススメします。ピーター卿シリーズの1作品目で、他のシリーズも見たくなること間違いありませんよ。」
 
突然のテンションの変わり具合に桐生はあっけにとられていた。大人しそうな様子をしていた女子生徒が突然オススメの本を怒涛のラッシュで勧めてきている。今も他にも...とさまざまな本をオススメしている。
少し引いているような桐生の様子を察した女子生徒が、今度は謝罪をしてくる。
 
「あ...ごめんなさい。私ったら久しぶりに小説について語れそうな人を見つけたもので。迷惑だったでしょうか?」
 
「最初は驚いたが...本が好きなんだなって思ったよ。俺も本は好きな方だが君に比べるとまだまだ足りないもんだと思ったよ。こんなもんじゃ本が好きだなんて言えないな。」
 
申し訳なさそうな表情を浮かべていた女子生徒であったが、桐生の返答が悪くなかったため、少し顔に驚きが現れていた。
 
「それでは...他にも紹介したい本があるのですが...紹介してもいいでしょうか?」
 
「ああ、もっと本について知ってみたいから教えてくれるとありがたいのだが、時間大丈夫?あと20分ほどしか図書館は空いていないが?」
 
「問題ないです。私個人が借りたいと思った本は既に貸し出しの上限数まで先ほど借りていますので。時間が許す限り紹介させていただきます。」
 
 
 
 
図書館が閉まる時間を過ぎ、寮へと戻る道で重たそうにカバンを背負っている二人がそこにいた。
 
「少々借り過ぎてしまいましたね。本を読むためなら仕方ないことなのですか、帰り道に重くなってしまうのが辛いところです...」
 
「確かに本は面白いが、持って移動するときに重くなってしまうのがつらいところだよな。でもこれから読む楽しみを考えれば我慢できることだよ。」
 
「そうですね。新しく借りた本たちがどんな世界へ連れて行ってくれるのか私は楽しみです。一刻も早く帰って読みたいですね。」
 
「そうだな。それはそうと...君の名前は何なんだっけ?そういえばまだ聞いていなかったな。俺は桐生 司。1年Dクラスに所属しているよ。」
 
「私としたことが本を紹介することに夢中ですっかり忘れてしまっていました。申し遅れました。私は椎名ひより、1年Cクラスに所属していますのでよろしくお願いします。」
 
「Cクラスか。まだ入学してから二日目だから他のクラスの情報はあまり知らないから分からないのだが、どんな感じなんだ?」
 
「そうですね...」
 
今までハキハキと答えていて椎名は急に語尾を濁していた。その様子からCクラスでは何かあったのだろうかと桐生は予想し、無理に答えなくてもいいと伝えた。
椎名はそうしてもらえると嬉しいですと言い、Cクラスについて特に情報を仕入れることは出来なかった。

またしばらく歩いていると1年生の寮が見えてきた。
 
「ようやく寮まで着いたな。かれこれ20分くらい歩いたような...」
 
「確かにそれくらい歩いていましたね。それでも今日はその20分がとても少なく感じました。とても有意義で楽しい20分の帰り道でした。」
 
「確かに楽しかった。小説についてこんなに知っている人に知り合えて良かった。」
 
「はい。私もあまり共通の趣味を持つ友人とはなかなか出会えていなかったものですのでとても嬉しかったです。それはそうと...桐生くんはこちらの本には興味ないですか?」
 
寮の中に入ると少し物が置けるスペースがあるのでそこに椎名は持っていたカバンを下ろして1つの本を取り出す。その本を見てみるとエラリー・クイーン作のミステリー小説であった。これは有名な名作ミステリー小説で先ほどまで様々な本を勧めてもらっていた桐生でも知っているとほど有名な作品ばかりであった。
 
「ああ、俺でも知っているような有名な作品だな。でも聞いたことはあっても見たことはなかったから見てみたかったんだよな。」
 
桐生の言葉を聞くと、椎名は嬉しそうに手を合わせていた。その目は先ほど本を進めていたような輝きに満ちた目をしていた。
 
「よろしければ、この本をお読みになりませんか?」
 
突然の提案に桐生は驚いていた。出会ってその日に本を借りるなんて思ってもみなかったが、エラリー・クイーンの作品は見てみたいので借りてみることにした。
 
「そうですか、では返すのはいつになっても構いませんよ。じっくりと読んで楽しんでください。」
 
「ああ、ありがとう。今さっき名前を知ったのだからあれかもしれないが、連絡先を交換してくれないか?また本について詳しく聞きたい。」
 
「そうですね。私も本について色々と話をしてみたいのでいいですよ。こちらが私の宛先です。」
 
桐生が思っていたよりも軽く交換してくれたため、少し拍子抜けとなったが、こうして桐生に本を読むことが大好きな友人が生まれてのだった。

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