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ようこそ実力至上主義の教室へ


今回でようやくプロローグ部分が終わります
それと、今回も少し長めです

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少しづつ日差しが暑さを感じさせるようになる5月。桐生たちがこの学校に入学してきて一月が経過した。
桐生がいつも通り少し早く登校し、1限目の準備をしてからクラスメートたちと雑談しているとクラスメートたちは口を揃えて同じ話をしていた。
 
「ポイントが振り込まれないんだが、桐生には振り込まれたのか?」
 
多くの生徒たちが質問をする。桐生にも振り込まれていないため、振り込まれていないと返す。それを聞いて多くの生徒たちがおかしいなと首をかしげる中で桐生はどうしてこうなっているのか、その理由を知っていた。
 
先日、Aクラスの坂柳と交渉をしたときに聞いた話によると、生徒の行動により、素点である1000ポイントから減点をしていき、その点数かける100倍された数字分だけ振り込まれると言うのだ。最初は少し疑っていたが、現実問題彼女の話していたことは間違っていなかったのだと確信していた。
 
 
しばらくすると、ホームルーム開始のチャイムが鳴ったので、クラス全員が話を切り上げ席に戻る。しばらくすると手にポスター状の筒を持った茶柱先生が教室へと入ってきた。しかし、普段の表情とは異なり、その表情はいつになく険しいものだった。いつものように池がセクハラまがいの発言をするが、茶柱先生は耳を傾けることなく、クラス全体に質問が無いか、と問う。その様子はまるで生徒たちからの質問があって当然という様子であった。その後、数人の生徒がポイントが振り込まれていない、とすぐさま手を挙げ、質問をした。
ポイントが振り込まれていないのは何故か、この質問に対して先生は既にポイントは振り込まれていると言う。

ここまで来て完璧に坂柳の予想は当たっていたと確信する。しかし、Aクラスからクラス順が降るごとに成績の良さが分かれているのだろうことから、Aクラスは優秀な人材の宝庫であるため、そういう失態の回数は少ないだろう。その中でそのルールに気づいた坂柳は本当にすごいと思う。ちなみにこの情報は綾小路から聞いた。須藤が初日にコンビニでもめた時にDクラスであると話すと先輩たちはバカにしていてらしい。そのことからそうであると考えた。
 
「お前らは本当に愚かな生徒たちだな。」
 
今まで生徒からの不満を聞いていた茶柱先生がドスの聞いた声を出す。突然の発言に多くの生徒が驚いている。驚いていないのは、隣にいる綾小路、堀北、高円寺ぐらいであった。
 
「ポイントは振り込まれた。これは間違いない。このクラスだけ忘れられた、などという可能性もない。わかったか?」
 
だがしかし、未だ多くの生徒はその言葉が指し示すことが分からないようだ。その様子に茶柱先生はあきれた様子を示していた。
 
「ははは!なるほど、そういうことなのだねティーチャー。」
 
全てを理解した高円寺が高らかに笑いながら話す。
突然笑った高円寺に理解が追いついていない生徒たちは狐につままれた様子をしていたが、そんなこと高円寺は気にする様子も見せず、足を机に乗せ、偉そうな態度で先程質問をしていた生徒に指をさす。
 
「分からないのかい。簡単なことさ、私たちDクラスには1ポイントも支給されなかった、それだけの話さ。」
 
「はあ? なんでだよ。毎月10万ポイント振り込まれるって茶柱先生は言っただろう?」
 
「私はそう聞いた覚えはないね。それに私と同じく気がついているのだろう?ウッドボーイ?」
 
高円寺はそういうと桐生に目を向ける。突然高円寺に目を向けられたことに桐生は驚いたが、それ以上にクラスメートたちも驚いて桐生の方向を見る。
 
「誰がウッドボーイだ。まあいい。先生は俺たちDクラスに振り込まれたポイントは0ポイントだと言いたいんだろう。そうすれば今回、納得いく。現に他クラスはしっかりと振り込まれていると聞いていますから。それも減点されて...ね。」
 
「高円寺の態度には問題ありだが、二人とも間違っていない。全く、これだけヒントをやって自分で気がついたのが数人とはな。嘆かわしいことだ。」

心底呆れたという表情を茶柱先生は浮かべる。俺の言葉で今回のことに気がついた生徒たちもいたが未だに理解できていない人たちもいるようであった。
 
「振り込まれなかった理由を教えてください。でなければ僕たちは納得出来ません。」
洋介が質問をする。おそらく洋介も気がついているようだが、未だ理解できていない人のために質問したのだろう。
それに対して茶柱先生は、なおも呆れながら機械的に返答する。
 
「遅刻欠席、合わせて98回。授業中の私語や携帯を触った回数391回。ひと月で随分とやらかしたもんだ。この学校では、クラスポイントがプライベートポイントに反映される。その結果お前たちは10万ポイント全てをたった一月で吐き出した。入学式の日に説明した通り、この学校は実力で生徒を測る。そして今回、お前たちは0という評価を受けた。それだけに過ぎない。当校でも入学一月で全てのポイントを吐き出したのはお前たちが初めてだ。素直に褒めるよ。お前たちは立派な不良品だ。」
 
不良品という言葉に何人かが反論するが一切聞き入れてもらえることはなかった。実際今までしていることはそれと変わらないのだから...
洋介は生徒の代表として、先生に食い下がるも正論で論破され、ポイントの増減の詳細も教えてもらえない。そんな様子に次第にイライラとした表情を見せるものたちもいた。そんな様子を見てか、さらに衝撃の情報をDクラスに茶柱先生は伝える。
 
「これから先、遅刻や私語を改め、仮に今月マイナスを0に抑えたとしても、ポイントは減らないが増えることはない。つまり来月も振り込まれるポイントは0ということだ。裏を返せば、どれだけ遅刻や欠席をしても関係ない。どうだ、覚えておいて損はないぞ?」
 
うっすら笑みを浮かべながら茶柱先生はそう言った。この発言に洋介の表情がさらに暗くなる。今の言葉の意味を理解してない生徒もいるが、遅刻や私語を改めても意味が無い伝わったようだと言っている。
 
 
衝撃の事実に静まり返った教室にホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。茶柱先生は本題に入る、と言い、筒から白い厚手の紙を取り出し、黒板に広げた。そこには各クラスのポイントが表示されていた。その紙を見て坂柳から送られてきた情報と相違がないのを確認していた。俺も坂柳からの情報がなければ驚いていただろう。

Aクラス 940
Bクラス 650
Cクラス 490
Dクラス 0
 
「おかしい......」
 
普段は臆病で人前で話さない佐倉が思わず声に出してしまう。
 
「並びがいくら何でも綺麗すぎる...」
 
そこにはAからDへと表示されていた。ここでも情報に間違いないことが分かったため、改めて感心した。ここまで正確な情報を掴めるなんてどんな情報網を坂柳は持っているんだろうか?そう思った。
 
「段々理解してきたか? お前たちが、何故"D"クラスに選ばれたのか?この学校では、優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒は"A"クラスへ。ダメな生徒は"D"クラスへ、と。つまり、Dクラスは落ちこぼれが集まる、この学校最後の砦。お前たちは、最悪の不良品ということだ。実に不良品らしい結果だがな。」
 
不良品...ね。俺にはぴったりの言葉じゃないか。大きなミスをしてそれでものうのうと生きてる。今の俺を指し示す言葉としてぴったりすぎる。
 
そんな時だった。ガゴン、大きな音が静寂したクラスルーム内に響き渡る。どうやら須藤が机を蹴った音のようだ。
 
「これから俺たちは他の連中にバカにされるってことか。」
 
クラス順に優劣が決まるのだから、当然一番下のDクラスは周りから卑下される対象だろう。人間は下を見下したがるものがあるもので、下がいるから安心するという考えをする。

しかしそんな絶望的この状況を打開する術はある、そう先生は言う。それは、クラスポイントが他のクラスを上回る事。つまり、今回で言うと僕たちがCクラスの490ポイントを1ポイントでも上回っていればCクラスへと昇格していた。
さらにもう一つ残念な知らせがある、と言って先ほど持ってきていたポスター状の一枚の紙を貼る。そこには先週行われた小テストの結果が記載されていた。
 
「この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば、32点未満の生徒は全員対象だ。もしも今回のテストで適用されていたなら7人は入学早々退学になっていたところだったな。

その7人の中でも池、山内、須藤が生徒が驚愕の声をあげる。先生に食って掛かるが軽くいなされる。そんな中、再び高円寺が口を挟む。
 
「ティーチャーが言うように、このクラスには愚か者が多いようだねぇ」
 
爪を研ぎながら偉そうにほほ笑む。そんな高円寺に池君が同じ赤点組だと思ったのか反論する。
 
「よく見たまえ。私がどこにいるのかを。」
 
池たちはそう言われてから順位を見る。下から見ているがいつまで経ってもその男の順位は現れない。まさかと思い上を見るとなんと同率トップ1位の座に君臨していた。
自分と同じ頭の悪いやつだと高を括っていたのだろう。予想外の頭の良さに池たちは悔しそうな表情を浮かべていた。
ちなみに俺は88点でクラス内同率3位であった。おそらく最後の問題と、どこかでミスをしたのだろう。次は一位を狙ってみせる。
 
「それからもう一つ、高い進学率と就職率を誇っているこの学校だが、その恩恵を受けれるのはAクラスのみだ。それ以外の生徒には、この学校は何一つ保証することはない。お前らのような低レベルな人間がどこにでも進学、就職できるほど世の中は甘くできているわけがないだろう。」

もう既に満身創痍であるDクラスへと先生は止めとばかりに言う。その言葉に男子生徒、高円寺と同率トップだった幸村君が立ち上がり文句を言う。だがしかしここでも高円寺が口を挟む。
 
「みっともないねぇ。男が慌てふためく姿ほど惨めなモノは無い。」
 
「お前はDクラスだったことに不服はないのかよ!」
 
幸村がそう高円寺に反論する。しかしそんなこと気にも留めず高円寺は櫛で髪を解きながら返す。
 
「不服?別にないね。」
 
「お前はレベルの低い落ちこぼれだと認定されて何も思わないのか!」
 
幸村もエキサイトしているようだ。さらに高円寺の態度が火に油を注いでいるのだろう。顔を赤くしていきりたっていた。
しかし尚も高円寺の態度は崩れなかった。
 
「フッ。愚問だな。学校側は、私のポテンシャルを計れなかっただけのこと。私は誰よりも自分のことを評価し、尊敬し、尊重し、偉大なる人間だと自負している。学校側がどのような判定を下そうとも私にとっては何の意味も持たない」

唯我独尊を体現した男のようであると正直思っていた。確かに高円寺はプライドが高く自分の能力を大きく信じている。しかし、実際に彼には凄まじい能力を持っているため成り立つことなのだろう。そこらへんの認識を変えなければいけないな。
 
「それに私は高円寺コンツェルンの跡を継ぐことは決まっているのでね。DだろうがAだろうが些細な問題なのだよ。」
 
確かに将来を約束されている男にとっては進学先がどうだという話は関係のないことだろう。なぜ進学先にも困っていない高円寺がここを選んだのかわからない。聞いたところで流されるのだろうが。
 
「浮かれていた気分は払拭されたようだな。お前らの置かれた状況の過酷さを理解できたのなら、この長ったるいHRにも意味はあったかもな。中間テストまでは後3週間、まぁじっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している。」
 
そう言い残し、茶柱先生は教室から出て行った。またもや意味深な事を残していったが、乗り切れる方法が勉強する以外に存在するのだろう。そしてその方法は考え自ら導き出せと暗に示しているのだろう。
そんなことほとんどの生徒は気づく余裕もないだろうが...
 
 
茶柱先生がいなくなり、教室は非常に荒れていた。荒れているクラスを、洋介と櫛田が必死にフォローをしているがそのフォローだけではなんとかならないようだ。
 
「皆、授業が始まる前に少し真剣に聞いて欲しい。特に須藤くん」

まだ騒然とする教室で、洋介が教壇に立つ。これ以上個人個人をフォローしていてもラチがあかないと考えたのだろう。そして洋介は来月のポイント獲得のため協力をし、助け合っていかなければならないこと、遅刻や私語などをやめる必要があるということをクラス全体に伝える。
しかし、それを言っても聞かない生徒たちがいる。それは先ほど茶柱先生が話していた、悪い点を改善してもポイントが変わらないということ。真面目にしてもポイントが増えないならやる意味が無い、そう考える生徒たちもいるだろう。その考えをしてしまう生徒たちには櫛田がフォローに向かうも、結局須藤は聞く耳を持たず教室を出て行こうとする。
このまま出ていかせてもいいのだが、須藤一人のせいで他のメンバーが割りを食らうのはどうかと思うため牽制しておく。
 
「たしかに遅刻や私語をやめたところでポイントは増えないと茶柱先生は言った。しかしあの含みのある発言を聞いて何とも思わなかったのか?」
 
「あ?」
 
出て行こうとする須藤が桐生の言葉に足を止める。足は止めたが苛立っている様子は見てとれた。普通なら刺激しないように話すだろうが、あえて俺は刺激するように話す。
 
「何もしないで去るのか。結局お前は愚か者だということだな。」
 
「あ?今お前何つった?」
 
須藤がこちらへと突っかかってきた。予想通りだ。冷静に考える余裕がないから、不利になればなるほど力で抑え込もうとする。それを利用させてもらう。
 
「挽回が出来ると言われてるのに何もしないでここから去ろうとしているお前は愚か者だと言っているんだ。ここで逃げるようなら部活だって逃げ出すんだろ?」
 
「お前に何がわかるってんだ!?」
 
声を荒げてこちらへと接近して胸元を掴み上げてくる。須藤の方が背が高いため、吊るし上げられるような状態になる。
 
「須藤くん!そこら辺にしてくれないかな?」
 
「須藤くん!もうやめて!桐生くんもクラスのためを思って言ってるだけだから許してあげて?」
 
洋介と櫛田が須藤をやめさせようと問いかける。しかし頭に血が上っている須藤にはそんな言葉は届かない。
 
「うるせえ黙ってろ。俺はこいつに用があるんだからな。」
 
「何カッコつけてんだ。敵前逃亡しておきながら。」
 
「その生意気な口を閉じろつってんだろうが!殴ってその口黙らせてやろうか!」
 
「司もそこまでだよ。言い過ぎだ謝ってくれ。」
 
洋介がこちらにも謝罪するように言ってくる。しかしここで謝ると元も子もないので続ける。
 
「解決策はあると話してんだろうが。ここで腐ってたらそのまま終わりだ。お前だってバカにされたくないんだったら何か考えろ。ポイントで逆転できないならそんな情報教えたところで意味ないだろうが。」
 
「...ちっ...」
 
少しは俺のいうことが理解できたようで俺の胸元から離れる。しかし完全には理解できないようだった。
 
「......うるせぇよ。だったらどうしろってんだ。」
 
「簡単な話さ。中間試験で高得点を取ればいい。絶対にくれるとは限らないが、高得点を取れば評価は変わる。そうすれば少しはポイントをもらえるだろう。それを重ねていくことでCクラスに上がれるんじゃないのか?」
 
「......わからねえよ。俺はバカだからな。」
少し考える素振りを見せたが教室を出て行ってしまう。ダメだったが少しは分かったようだ。須藤みたいなタイプはは負けることを嫌うと思ったけど、それよりもプライドが勝ってしまうことがある。
ここで牽制しておくことで多少須藤もこちらへ入ってきやすくなるだろう。
須藤が出て行ったことで普段の須藤の態度に文句を言い始める生徒達。そんな中、洋介と桔梗がこちらへやってくる。
 
「ちょっと司、言い過ぎだよ。」
 
「悪かった。須藤みたいなタイプは少し強めに言っておく方がいいと思った。それにあいつはバスケに全力だ。バスケができなくなると考えればするように動く。そうなるように少しだけ刺激したんだ。」
 
「少しだけっていう割にはかなり挑発していたよね?」
 
たしかに少し言い過ぎだとは思ってる。また須藤に謝っておこう。
 
「ところで司、放課後にポイントを増やすためにどうしていくべきか話し合いたいんだ。君も来てくれるかな?」
 
「テスト勉強もしたいから長時間は無理だがある程度ならいいぞ。」
 
「ありがとう。それで、みんなに参加してもらいと思っているだ。なるべく手短にするよ。」
 
その後始業のチャイムが鳴ったため、席に戻る。
そして放課後、全員とはいかないが、多くのクラスメートたちが集まって対策のミーティングが行われらこととなった。

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次回以降テスト編ですが、今回は深く主人公は関わらず進んでいきます

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