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[R18][ShimaSen] 恋人がいつもに増して攻めっぽい

Author: 優

Link: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20626500

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⚠attention⚠

・腐向け、nmmnについて理解がある方のみお進み下さい!

・本人のお名前をお借りしているだけで、本人との関係は一切ございません。

・smsnとなっております。苦手な方はブラウザバックを推奨します。

・作者は関東住みなので、方言など見苦しい点多いと思いますが、暖かい目で見てやってください。

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「おはようのちゅー、しようやぁ」

朝、俺が目を覚ましたとき、耳にした第一声はそんな言葉だった。覚醒したての頭から一瞬で眠気が吹き飛んだ。

耳元で囁かれるにはかなり破壊力があって、刺激が強い朝の言葉を発した主は、最近になって同棲を始めたばかりの最愛の恋人だった。

グループ活動においてのメンバーであり、相棒でもあって。そして、数ヶ月前に恋人という肩書きが増えた。

志麻くん___彼の呟きに衝撃を受けつつ、俺はゆるりと身体を起こした。

「まーしぃ......今、なんて?」

「ちゅーしよって。おはようのちゅー、しようって言うた」

「うん......そうかぁ」

聞き間違いじゃなかった。

恋人同士であれば、キスしようと甘えることがあってもなんらおかしいことはないと思うかもしれない。
お熱いカップルだなぁの一言で済む話かもしれない。

しかし、俺らは男同士のカップルで、現メンバーであるのも相まってお互いに距離感の詰め方を図りかねていた。
同じベットで寝ることになったのもごく最近だ。そのため、もちろんのこと志麻くんがそんなお願いしてくるなんてはじめてのことだった。

...俺とキスしたいんや。甘えたいんかな?

もう、まーしぃたら。かわいいやつなぁ!とか思いながら、俺は悠然と微笑んで志麻くんに覆い被さり、ゆっくり唇を合わせた。

恋人になって数ヶ月。

そして、同棲を初めて数週間経つ。

付き合う前のことを考えたら信じられないくらいに スキンシップが多くなり、距離も縮まった。それこそ、メンバーやスタッフさんの影に隠れて手を触れ合わせたり、肩を触れ合わせて座ったり。
それなりに順序を踏んで、恋人らしいことにも挑戦してきた...と言いたいところだが、具体的にと聞かれれば返答に困る。

言ってしまえば、キス止まりであった。

もとより、体を繋げたいだとか下心を持って想いを通わせたわけではなかったことが大きい。

女性が相手ならまだしも、相手は志麻くんだ。たとえ裸体を目にしても、ドキドキはしてもムラムラはしない。女性相手だったら相手の面子を保つためにも体を繋げることは割と必要だと思う。

志麻くん相手やと、そんなん関係ない。急いで体の関係を迫る必要もなく、気楽すぎるゆえに完全に甘えてしまっている。

むしろ、キス以上先に進む類の話題は、タブーと化している気がするのは俺がそう感じているだけかもしれない。

仲が深まっても、体の方の進展はまるでゼロ。とはいえ現時点での状況を棚上げして言えば、俺はタチなんだろうなぁと勝手ながら思っていた。
男女間で例えるなら男性側。性行為において入れる側で、恋人をアンアン言わせる方...なんて、生々しいけど。

志麻くん。男性らしくて面倒見もいいけど、言っちゃえば身長が俺より低めやし涙もろい。最近は目尻が下がって、咄嗟に出てくる声も高くなった気がする。

俺と坂田からすれば、お兄ちゃん気質なところがある。そんなところもたまらない。俺の恋人は、けっこうかわいいところがある。

そんなわけで。

朝1番にちゅーをおねだりしてくるかわいい彼のために、濃厚なキスをプレゼントしてあげようと内心で張り切っていた。

寝起きの覚醒は早い方だ。至って澄ました顔で、俺は唇を合わせた。

ここは、自称•タチ側の俺がリードして、志麻くんを満足させたるんや!と。

そう思っていたはずなのに。

「ん...」

「っん、......ッ?」

覆い被さる俺の腰にするりと手のひらが伸びてきた。

志麻くんから体に触れてくるなんて、珍しい...と思いつつ受け入れていればもう片方の手が俺の頭...後頭部らへんに触れ、髪を優しく混ぜた。

薄く開いた口内に舌を差し込んで、荒らしてやろうとすれば思惑ごとマグマのように熱い彼の舌に絡め取られ、ちゅっと甘く吸われた俺はされるがまま。

いつの間にか主導権を完全に奪われていた。

腰に添えられた手がスウェットの中に侵入し、素肌の上をするすると滑る。それがくすぐったくて、身をよじれば甘い痺れに変わり全身に広がっていく。

くちゅくちゅ音を立てて交わる舌から伝わる彼の体温と、毒に侵されるように熱を上げていく俺の体。

えっと、いま、なんでちゅーしてるんやっけ?

なにも、考えられへん...

感じ取れるのは胸の内を広がるじんわりとした幸福感だけ。とろけていく思考。気持ち良すぎる。唇が離れていく頃には、体が熱を上げていた。

おかしい、変やぞ?

キスで、志麻くんをとろとろにしてやろうっておもってたはずなのに...

「朝からかわい...センラ」

とろとろになってるのは、俺の方?


恋人がいつもに増して攻めっぽい

これはおかしい、何か変やぞとカレンダーを見れば、数ヶ月ほど先に飛んでいた。

同棲を始めたばかりのはずの二人の部屋は物が増えていた。見覚えのないクッション。布団も季節に合わせて厚手のものに変わっていた。

起きてすぐ目にしたのは志麻くんで、代わり映えした様子もなかったから気が付かなかった。

「なぁ、志麻くん。俺ら付き合ってどのくらいやっけ?」

「あー...ちょうど一年くらいやんな」

やはり、明らかに月日が進んでいた。

会話の内容から確信した。俺が今いるこの世界線は、俺がいた世界の数ヶ月進んだ俺達ということになっているらしい。

元の世界では途中だった彼のワンマンはとっくに終わっていて、うらさかのワンマンさえも無事完走していて。
なんなら、夏に行われているライブツアーも完走済み。ハロパが差し迫っているくらいの期間だった。着ている服の袖もすっかり長くなり、厚手のものに変わっていた。

そして、どうやら。変化したのは時間だけではなかったらしい。

寝室のゴミ箱に、使用済みのコンドームと丸められたティッシュがいくつも捨てられているのを見つけたときには、目を見張った。

間違いない。

数ヶ月の間に、俺たちは体の関係にまで発展している。

その次に人間が考えることなど、知れている。

...この世界線だったら、俺は突っ込む側なのか、そもとも受け入れる側なのか。

そのことが気にかかった。

_むしろ、それ以外のことは割とどうでもいい!

仕事のこととか世間で騒がれていることか、そんなことはいずれ分かる。家族やメンバーに異常がなければ無問題だ。

なんてタイミングがええんや。俺と志麻くん、どっちが突っ込む側なのか。

......調べなくてはならない、と思った。



自分が、ネコか、タチか。

そう判断する材料というのは、意外にも少ない。というか、探した上で見つからなかった。

男同士の行為について調べていたときに得た情報であるが、性行為をした翌日のネコ側の男性は腰を痛めるらしい。
ソースがどこなのかよく分からない情報だが、朝からやたらと腰が痛むので、嫌な予感がしたのが手がかりの一つだった。

とはいえ、腰痛持ちなのは事実なので数ヶ月の間に症状が悪化しただけという可能性も否定できない。

まだ、希望はある。

そう。むしろ、タチとして腰を振りすぎて痛めてしまったのかもしれへん。もしそうなら、勲章みたいなもんや!

俺は前向きな男である。思考の切り替えも早い。

スマホを漁ってみればハメ撮りとかないかな〜と思って遡ったが、くだらないスクショばかりでそれらしきものは一つもない。それ以外に、判断材料の手がかりすら見つからない。

しいてえば、寝室に置かれたコンドームの箱のサイズを見てXL...?くそでかいやん、俺のサイズと全然ちゃうと首を傾げはしたが、まだ希望はある。

考えられるのは、この世界の俺が大見栄を張ったサイズを買って、装着している説。

もしくは、数ヶ月の間に俺のブツが急成長した説。

......もうひとつの一番有力な説は、考えたくない。

いや、さすがにでかい通り越してごついとは認識していたが、こんな特大サイズではなかったはずだ。平常時なら俺とそう変わらなかったはず。

俺も大して負けてないはずやもん...多分。

部屋の中を徘徊して証拠を探す俺に志麻くんは甲斐甲斐しく着いてきて、見守っていた。

コンドームの箱を確認する俺を見て「どうした?もしかして切らしとった?」と首を傾げていた。

なぁ...このコンドームは何?そんなかわいい顔であざとく首コテってしてるけどさぁ。こんな特大サイズ付けてんの?嘘やろ?嘘って言って!!と心の中で自己完結。

これはもう......正直に聞くしか、ないんちゃう。

「なぁ、変なこと聞いてええ?」

「おん」

「志麻くんって抱いてる?抱かれとる?」

「は」

「いやぁ。すんごいおかしなことなんやけど、記憶飛んでもうて...」

この際、怪訝に思われたとて良かった。

相手は志麻くんだし、タチネコどちらに転んでもネタとして扱ってくれそう。
それに、こんな簡単な質問では嫌われる可能性もないし俺の世界の志麻くんじゃないし。受けるダメージはゼロに等しい。

それに。

ひょっとしてひょっとすれば、「昨日、志麻のことあんなに激しく抱いたのに。忘れたんか...っ///」と照れて恥ずかしがる志麻くんが見れるかもと思ったのは分厚めのフィルター越しに彼を見ていて、幻覚が強めだったのかもしれない。

ごくりと唾を飲んで返事を待つ俺に、志麻くんはフッと笑った。俺の耳元に、整った唇が寄せられる。

「...抱いとるよ、センラのこと。」

「ッン、みみぃ...っ」

「はは、かぁわええ」

センラが抱けるわけないやんか。とか言いながら、俺の耳に口づけて、やがて離れていった。

......やっぱりな!

俺は耳を押さえながら、志麻くんにキッと鋭い視線を送る。そんな俺を歯牙にも掛けず、志麻くんはいけしゃあしゃあと言い放つ。

「忘れてもうたなら...体に聞いてみる?あんたがいつも、俺に抱かれてるってことを」

「や、別に?そこまでする必要ないっていうか?さすがに俺達もその...色々としんどいお年頃やし?そう、体とか。そういうのはちゃうやんか」

「めっちゃ早口やな。かわいい。ええんや?」

志麻くんは、悪戯っぽく歯を見せて笑っている。

やっぱり、正真正銘のタチや。この志麻くんは。通りで、なんとなく違和感があると思った。

......同族嫌悪的なやつやったんや!!

体に聞いてみる策は、お断りさせてもらった。タチかネコか本人に聞くというのは、想像以上に危ない橋を渡っていたようで、危うく処女喪失してまうところだった。
ほっと平たい胸を押さえて息を吐く。

俺は俗にいう、『smsnの世界線』とやらに紛れ込んでしまったらしい。

タチネコを名前の左右で表記が変わるらしく、俺が元いた世界が『snsmの世界線』やったとしたら、ここは全くの逆になる。

「......ありえへん!」

この世界の俺は、素直に彼に抱かれているらしい。なんやそれ。そんなの、全然男らしくない。

それに...志麻くんも、あんなに男らしくなっちゃって。なんていうか、言葉では言い表せないような、抱いてる側特有の隠しきれない包容力と男らしさがあったというか。

タチの志麻くん相手に、起き抜けのキスでとろとろになってもうたのは否定できない。増して志麻くんは志麻くんなのでドキドキすることにもかわりはない。
骨抜きにされて、元の世界の彼を抱く気は失せたか?と聞かれると答えはNO。
センラとて、キスひとつくらいじゃ堕とされんぞ。それくらいでタチを譲るくらいだったら俺はとっくに彼に抱かれている。

この世界の志麻くんは、なんていうか、かわいくないのだ。食えない相手だと肌で感じるというか。

隙があるようでない。こちらの世界の志麻くんを前にしていると、抱く気は失せる。あんな男前な志麻くんが抱かれるとか解釈不一致すぎる。

でも、元の世界の志麻くんは別。とってもかわいいのだ。あんなに積極的に激しいキスを求めてきたりしない。笑顔が爽やかで、八重歯をのぞかせて笑うのがかわいい。楽しくなると声が高くなるし、言動がところどころ可愛い。

...あれ?なんか、スパダリ志麻くんも割とそんな感じな気すんねんけど。いやいや、一緒なはずがない。

これほどまでスパダリ臭を漂わせてくる人じゃなかった。天然でヘタレで、俺との距離を掴みかねてる雰囲気がかわいかった。不意打ちで距離を縮めて困らせたり、守ってあげたりと振り回したくなる。

俺の志麻くんは、受けに決まってる。バリネコ。俺はそう確信していた。

いつもより男前な志麻くんを堪能していて、夢中で。元の世界に帰る方法なんて完全に頭から抜けていた。

その晩、俺は布団の上で落ち着きなくごろごろ転がっていた。

男前な志麻くんも、惚れ惚れするくらいかっこええんやけど。夜の事情はさておき、こんな志麻くんもええなと思うくらいには内心でハートが飛び交っていた。

元より兄貴肌の男だ。面倒見がいいのは間違いない。なんだかんだ、俺はどんな志麻くんでも好きなのだ

しかし、出来すぎていてちょっと男としてジェラシー。

こちらの世界のセンラは前日にこっぴどく抱き潰されたらしい。腰痛持ちだったとはいえ増して腰が痛いし下半身の不快感がとんでもない。だからかと納得していれば、ここで男前志麻くんの出番だ。

一日中俺をお世話してくれた。

家中を徘徊していれば、後をついてきたのはそのせいだったらしい。
言えばなんでも取ってきてくれるし、甘いもの食べたいとぼやいていれば、コンビニまで走ってきてくれた。

それどころか、歩くときすら支えてくれる始末だ。

頼めば、お風呂やトイレも手伝ってくれそうな雰囲気だった。さすがにそれは嫌だったので頼みはしなかったけど。

スパダリすぎ。俺がジジイになったら、介護されるってこんな感じかなぁ。その場合志麻くんも同じだけ歳とることになるけど...と老後に思いを馳せながら、センラは一日だらだら過ごしていた。

えぇー...これが、タチ側をつとめる男の包容力かぁ。

なんていうか、余裕が違う。アフターケアも欠かさないとはできる男だ。

俺も、元の世界に戻って志麻くんを抱くってなったら、このくらい尽くさなあかんのか。うーん。まぁ行けるか。俺やし。何とかなる。

実際志麻くん反り腰で悩んでるわけやし、労わってあげないとな。じゃないと彼はきっと無理をする。その場その場で我慢して、「あの時しんどかった」と事後申告するタイプやから、彼は。それじゃ遅すぎる!!

新しく学びを得たことは間違いなかった。

そんな風に、志麻くんの新しい態度に刺激されたことがたくさんあったのだ。志麻くんには、タチとしての振る舞い方を学ばせてもらった。

「俺がお皿洗っとくからな。先にお風呂入ってまえばええ」

「なに?や、ええよ。それとも、ひとりじゃ入れへん?志麻がセンラの体洗おか?」

「眠たいやろ。お風呂掃除もしとくからな。先に寝室行っててええから。」

俺はすっかり甘やかされて。お風呂を上がってほかほかの体のまま、寝室に滑り込む。髪の毛だけは雑に乾かした。
はぁーーほんまにデキる男。いい男すぎるやろ。顔も良くて、こんなにスパダリだなんて。

志麻くんのにおいのする枕にぎゅっと抱きつきながら布団を転げ回り続けていれば。

「......センラ?」

___男前志麻くんが、寝室に入ってきた。

「なぁに布団の上でごろごろしてるん、かわいいけど。ああ、布団跳ね飛ばしてるやんけ。」

「暑いし、要らんもん」

「ほんまか?それにしてもこの部屋寒すぎやろ。一旦暖房......嘘やろ、冷房付けてんの?温度上げるからな。ほら、布団被って、こっちきて」

「そんなん、寝れば暑なるし平気や」

「そ?じゃあ、もっと志麻の方寄って。ほんまに腰細いな」

あれよあれよと志麻くんがお世話してくれる。ピッと冷房のタイマーがセットされ、部屋の照明が落とされ。光源は枕元の簡易照明だけになった。

布団を整えられて、おまけにぎゅっと腰を引き寄せて抱き締められて暖をとる。

俺が何をしなくても、勝手に寝る準備が整えられていく。

なんて楽なんや。俺はこのまま、ダメ人間になってしまいそう。

「じゃ、寝よか。......あれ?これ、センラの枕やんか。俺の枕どこ行った...?」

「んぅ、ここに、あんで...」

「センラが抱きしめてたんか、俺の枕」

「うん...めっちゃ志麻くんのにおいするから...」

元の世界では、同棲してそれほど日が経ってなかったので、枕も布団も新しいものだった。
そのため、シーツからは柔軟剤のにおいしかしなかった。

だけど、この枕からはかなり濃い志麻くんのにおいがして、ついすんすん匂いを嗅ぎたくなってしまったのだ。

枕に顔をうずめながら応答していれば、俺を抱きしめる腕が不埒な動きをする。

「ん......?」

「......」

「まーしぃ...?」

「なに、そんなかわいいこと言って...。その枕、使っててええよ」

「ええの?」

「おん」

「ふふ、じゃあ使わせてもらうわ」

「ええから...センラ。」

「なに?」

うつ伏せになって、脚をバタバタさせている俺の上に、志麻くんがのしかかってきた。

「抱かせて」

「んぅ、〜〜ッ?!」

服の中に突っ込まれた手がするりと背中の皮膚を撫でさすった。微弱な刺激がぞわりと背筋の神経に伝わり、鳥肌が立つ。

嫌な、予感。

「腰、高くあげて......慣らすから」

「はぁっ?!」

振り返れば、簡易照明に顔を照らされた志麻くんが前髪を雑にかきあげて、目を細めてこちらを見ていた。

これは......まずい。

志麻くんの興奮を煽ってしまったらしい。

俺は慌ててストップをかけ、恐る恐る尋ねてみる。

「待って、まーしぃ。」

「なに」

「俺のこと、抱くつもり......?」

「抱きたい。センラかわいいから、興奮してきた」

「んん?うん、まぁ...俺が可愛いかどうかは置いといてな?今日は辞めとこうや。ちょっと腰がしんどくて。俺が腰痛持ちなん知っとるやろ?まーしぃ」

「知っとる、けど」

「連日はほんまにきついんやって。な?また今度にして、今日は絶対無理やから!」

冷や汗が止まらない。

しっかり意思表示をすれば、志麻くんは恋人の願いとして聞く耳を持ってくれると思った。
そのまま、抵抗しようと体を起こせば逆の手が腹筋の窪んだところを指でなぞって。きゅっと乳首を摘ままれた。

電撃でも、流されたのかと思った。

「......っぁ、ああんッ♡♡」

口から、女のような甘い声がする。

え、誰の声?と一瞬思ったほどだ。シーツに指が食い込むほど足に力が入り、股間を突き出していた。背中が弓なりにしなる。

胸元の、乳首があるらへんの位置がジンジンして、未知の感覚。痒さにも似ている。

......めちゃくちゃに、いじくり回したい感じだ。

感度の良い女の子のようになってしまったこの身が受け入れがたくて、なおさら焦って志麻くんを止めようとする。

「まっ、まーしぃ、待って...?無理やって、言ったやろ...?」

「んー?」

「んんぅッ!?もー!ほんっまに、あかん!」

「なんで。気持ちよさそうなのに」

志麻くんは、ぜんぜん聞く耳を待ってくれない。それどころか、乳首をくにくに押し潰されて、快楽が下半身に溜まっていく。

「待っ......て?ほんま、無理やってぇ...あぅッ」

志麻くんを押し返すけど、口から出てくる否定の声は、予想以上に甘ったるい響きをしていた。このままでは乳首だけでイかされかねない。流石にないと思いたいが。

「ぁ......ほんまにやめて、なんかっ、変やねん!俺の乳首、こんなんちゃうかったぁ...っ」

「こんなって?最近は、いつもこうやん」

「ぅ」

「ちょっと弄っただけで、びんびんに勃起させとる。えっち」

「ぁ、あかん、ンンンッ......♡♡」

振り返って志麻くんの体を押しとどめているが、グイグイ距離を詰めてきて完全にやる気だ。

こんな強引な志麻くん、初めてや。

「ちゅーならええ?ちゅーしよ、センラ」

「や、待って...?」

「朝も、きもちよさそーやったもんな」

頑なに腕を掴んで、これ以上素肌を触らせまいとガードする俺に懲りたのか、キスまで引き下がった。

どうしようかと悩んでいる間に唇は奪われていて。

早急に、半開きになっていたらしい口に舌をねじ込まれ、意識は混濁する。

そうして思い出す、この志麻くんはすごいテクニックの持ち主やったと言うことを。

朝より増して荒々しくて、激しいキスに体は簡単に根を上げてしまって。

やばい、ちゅーめっちゃきもちいい。

舌先じんじんする。舌の感覚なくて、どこに自分の舌があるか分からんけど気持ちいい。

もっと、センラの舌を吸って欲しいと欲望が顔を出したところで、下半身が熱くなってきた。

見なくても分かる、張り詰めてズボンにテントを張っている。

キスの猛攻が止んだ後、だらしない顔を晒しながら、どうにか体を繋げなくて済む方法はないのかと思考を巡らせる。

目は潤み、とろんと顔の筋肉を緩めて舌を突き出した状態のままの俺を見て、志麻くんが意外そうな顔をしている。

「どしたん?今日のセンラ、めっちゃウブな感じやない?」

「......」

「ほんまに、初めてセックスした日みたい。記憶飛んだ言うてたけど、もしかして本当やったん?」

鋭い。志麻くんとしては、なんとなくの感覚で言ったのかもしれないが、核心をついている。

この状況下ならば、説得次第で性行為は回避することができると藁にもすがる思いだった。俺は、正直な事情を打ち明けることにした。

今日一日優しい志麻くんを見てきたから、こちらのことも配慮してくれるだろうと思ったのだ。

結果。

付き合ってまだキス止まりの段階で先に進めずにいること。今日の朝から、気付けばこの世界のセンラに成り代わっていたことを正直に話すことにした。

「そんでな?初めてやから、抵抗があるって言うか。そもそも、はじめては俺のまーしぃとしたいしな?」

「そっちの志麻は、まだセンラのこと抱いてないんや」

「まだも何も、まぁ、僕は一生抱かれる気なんてないんですけどね?」

「ん?」

「あなたにもそうやし、俺のまーしぃにも。まだ本番はしてへんけど、俺タチの予定やねん」

「......マジィ?」

逆の立場の自分が想像できないのか、一瞬顎に手を当てて考え込む素振りをして、また俺に視線を向ける。

「それは、ふたりで話して決めたん?」

「いや...僕が思ってるだけですけど」

「なら、勝手に決めつけるんはどうなん?そっちの俺も、センラのこと抱きたいって思ってるかもしれんよ」

「でもなぁ...だとしてもな?付き合って割と時間経っとるけど、全然手ぇ出してこーへんし。俺の体に興奮しぃひんのちゃう?受け身なんやと思ってた」

「あ゛ーーーッ、そっちの俺もやっぱ、ヘタレかましとるのか...」

「へたれ」

「同じ志麻やから確信できるけど。そっちの俺も、センラの体でガチガチに勃起するし、抱くつもりでいる。間違いない。」

「......そうなん?」

「うん。だって、センラさんすっごいかわいいもん。自信持って?」

打って変わって神妙な面持ちで、俺の肩を掴んでいる。

「や......そもそも、男やし、かわいいっていうのも変な話やんか。かわいいの方向性は求められてなかったていうか、俺もそういうつもりないし、かわいいところなんて全然ないと思うし」

「もぉーーそういうとこやって!めちゃめちゃ早口なっとるやん。照れてんの?」

「べつに、ちゃうもん......」

「なんでそこでテンション下がるねん。それに...ハッハァッ!これ、言うのほんまに恥ずいんやけどぉ...」

「なに?」

「たぶんその志麻もな、センラのこと...がっつりオカズにしてると思うで。もちろんタチのつもりで」

確信するほどだから、俺の可愛い志麻くんもタチのつもりでいる可能性が出てきたけど、その時はその時や。目の前の志麻くんにぺろりと食べられてしまうのは腑に落ちない。

「にしても、今日突然はしんどいって。怖いし」

「それでも。準備として、一回お尻で気持ち良くなる練習しといたほうがええよ」

「や......だって俺、タチやし」

「まだ言うん?あのさ、あんたの首元に昨日つけたキスマついとるやんか」

「え...?ああ、この虫刺されやと思ってたやつ...?」

「そ。それがあるってことは、あんたの体はこっちの世界の......俺のセンラの体ってことやろ?」

「ああ...たしかに。そういうことかぁ。」

体はこっちの世界の俺で、意識だけこちらにきてしまっているのか。
見覚えのないキスマ。それが本当に目の前の志麻くんが昨日つけたものだというなら、間違いない。
今更ながら、これで判明するとは。

「や、まーしぃ待って?あかんよ?俺抱かれるの嫌やもん」

「初めてでも気持ちよくなれるはずやで?昨日やって散々イキまくってたし。俺に任しとればええ」

「いやその、俺...はじめてで、怖いし...」

「大丈夫。俺のセンラはな、すっかり開発済で俺好みの、えっちな体しとるから。俺センラのこと何回も抱いてるし、任せて?」

「ええぇ......?」

いつもならよく回る口から、言い訳の言葉が出てこなくて、言葉に詰まってしまった。

「あんたが抱く側のつもりやったとしても。どこ突かれたら気持ちいいとか、覚えて帰ったら参考になるかもしれんで」

「...っ」

「男同士のセックスは、初めてなんやろ?」

流れだけでも、学んどいた方がいいかもしれんで。そんな甘っちょろいことを言われ、揺らいでしまう。

ぐらりと揺らいだ俺の意識は、傾いてはいけない領域に傾いてしまった。

「よしっ!センラのことは、志麻がトぶくらい気持ちよくしたるからな♡」

建前上は、ネコ側の気持ちを知って攻めの立ち振る舞い方を学ぶという目的で。

手慣れた手つきでローションを暖め手に馴染ませている志麻くんを前に、尻尾を巻いて逃げ出したくなった。

俺はこれから、彼に抱かれるんや。

抱かれることに思いの外乗り気な自分が嫌だというプライドが一人走りして、ガチガチに緊張している。
それに、恐怖心があるというのも本当だ。

このまま、尻での快感を覚えてしまって、後戻り出来なくなってしまったら...と。

借りてきた猫のように体を固くしてベットに四肢を投げ出し、胸の前に手をやりドキドキして身を任せる俺は、さながら生娘のようで。

「まずは、ここ♡」

乳首を無遠慮に摘まれた。

快楽が溜まっていった先の下半身が、別の生き物みたいに脈打って、窮屈な衣服の中でビクビクと震えている。

「あっ、ぁ、あ、あぁっ」

ごしごし。くりくり、

イク直前みたいに腰が浮き上がり、やがて弾けた。

四つん這いにさせられローションを纏いぬめりを帯びた指をつっこまれたら、ぐるぐると考え込んでいたものが全部吹き飛んだ。

「ああっ...!まー、しぃ、いやや......!」

「なにが嫌なん」

「も、おしり...ぃ、いじめるの、やめてや...っ」

「いじめてない。慣らしてるだけやって。慣らさんで志麻のデカチン受け入れてもな、裂けて痛い思いすんのは嫌やろ?」

「ん?ええ、自分でデカチンとか言ってんの気になるけどほんまに待って。さ、裂けるん...?!」

「まぁ、センラやし裂けることはないと思うけどな。それにセンラが志麻のやつでかいでかいって散々褒めてくれたんやで?」

「そんなん知らんって。何自信つけてんねん。こっちの俺そんなん言うてんの?キショ...」

確かにでかいけど。いざ、自分が入れられるとなると笑ってもいられない。褒め言葉のつもりで発してなさそうやな、俺。志麻くんが褒められていると感じて自己肯定感上がったなら良いが。

四つん這いで、自分の下半身がどうなってるかなどわからない。まして、お尻の穴がどうなってるかなんて、分からないし知りたくもない。

ただ、志麻くんが指を曲げたところにあるしこりを小刻みに動かされれば射精感が増して、指をバラバラ動かされれば縁がジンジンして先走りが飛んだ。

「あぁああーッ!!うっ、ぁっんぅ...ッ!♡」

腰が抜けてしまって、ガクガク腰が震える。指だけで幾度となくイかされて、体が熱い。

指だけで、こんなにイイなんて。俺の体はすっかり、女の子みたいや。

表情を取り繕う余力も残ってなくて、これでもかと眉を下げ、潤んだ目を細めて身悶える俺は、見るに耐えない顔をしていると思う。

「かぁわええ」

「まーしぃ、あつい、体がな、おかしくて...っ」

「センラの体が、期待してるんやね。...そろそろ、ええかな」

震える体を動かして、志麻くんの腕を掴んで訴えかければ、待ってましたとばかりにズボンの前をくつろげ始める。
下着に収まりきらないサイズのそれがぶるんっと元気よく飛び出して目を瞬く。

「でっかぁ......」

「まだ大きくなるからな。受け止めてや」

「は、まだ大きくって、ほんまに入るんか...?」

「入るから。んっ、見て、センラ...ッ」

鼻につきそうなほど、目の先で性器をゴシゴシ激しく扱かれる。
見ていると更にムクムクと肥大化するそれに、冷や汗と一緒に何故だか口内で生唾が溢れて、ごくりと喉を鳴らした。

そんな俺を見て、志麻くんはニヤリと笑う。

「物欲しそうな顔。えっちやな」

「そんなん、してへんしっ...あぁ!もぉ、待ってぇ?」

四つん這いで、尻だけ高くあげた状態になる。初めての場合は、この体制が楽らしいと教えてもらって、なるほどと頭の中で理解する。

そういえば、学んで帰らなあかんかったんや。俺の世界の志麻くんを優しーく抱いてあげるためにも。

忘れてかけていた自分が信じられない。

枕に顔を埋めると濃ゆい志麻くんの体臭がする。それに興奮してしまうのは、俺が変態だからなのか。

シーツを掴み、高く上げた尻をぷるぷるさせる俺の腰を掴んだ志麻くんが、一思いに奥まで突き刺した。

「ぅ゛ッッッ!!!」

「ッふ、」

とてつもない、圧迫感。

ぐぷぷぷ〜っとすごい質量のそれが、いたいけなセンラの穴を切り開いて侵入してきて、センラの下半身が熱くなった。異物感は、ある。けれどそれ以上に......。

ナカに入っているものの存在を理解して思わず締め付けると、ゾクゾク痺れが背筋を辿って。

まって俺、いまイきかけた?

処女喪失...と思ったが、処女ではなかった。この世界で、そこそこ使い込んでる穴だった。

「おかしいやろッ!数ヶ月しか、経ってへんのにぃ...!」

「ふは、俺の努力の賜物やな♡毎日センラの体触って、俺好みに開発したんやで♡」

中に収まるものが馴染むと、こんこん奥を突かれる。そのたびにあっあっあっと短い喘ぎ声が漏れてしまう。AVみたい。
ほんまに、突かれるとこんな声出てまうんや。

体がおかしい。
空気に触れてるだけの乳首がびんびんに尖って、シーツにこすれるたび甘い快感が生まれる。
おかしいおかしい。なんでこんなに気持ちええの。

「やっ......からだ、おかしぃ...いきた、ないっ」

「おかしないよ。志麻に従順で、かわいい体やんか。」

「むり、むりぃ...だしたない、」

奥を突かれる度に、なにかがじわじわ迫ってくる。男性器を擦られているときとは全く違う快感にぎゅうううと後ろを思い切り締め付けて絶頂した...はずなのに。

「うそ、やろ...?ちんぽから何も、でてへん...?!」

「メスイキしてもうたんやね」

「めす、いき......?」

「そ。女の子みたいに、出さずにいってもうたんよ、センラは」

「そう、なんやぁ......」

「センラふわふわしてる、かわい...」

未知の快感を教えられていく感覚。

こんなの、知らない。こんなに気持ちええのか。下半身が溶けてしまったみたいに気持ちいい。俺が落ち着くのを待ってそっと髪を混ぜる手が優しい。優しすぎる。

「せや、お耳も好きやもんな、センラは」

「ん、んんっ...みみぃ......?」

「そ、耳。センラは、お耳大好きなんよ。ていうかお耳って言うより...」

耳元で、ボソボソ囁かれる。女の子が腰砕けになっちゃうような、セリフを読み上げる時みたいないい声。
びくりと背筋が粟立つ。くすぐったい。ぎゅっと目を瞑って意識をそらそうとするけど、ふーっと息を吹きかけられて、全身の神経がびくびくして背が仰け反った。

「志麻の声が、だぁいすきなんやってな」

「んんんっ.........」

「俺がここで喋るとな、すぐグズグズになってるもんな?......腰、動かすで」

腰の動きが再開されれば、耳のくすぐったさと下半身の快感が結び付いてしまって。くすぐったいだけだったはずの耳が、おかしい。

明確に、作り替えられていく感覚。

「やっ、嫌や...」

「お耳、気持ちええな?」

耳元でリップ音が鳴らされて、ビクッとしてしまう。
もはや抵抗の声も弱々しい。だって気持ちよすぎる。
ここで抵抗して変な空気にするより、受け入れて気持ちよくなるほうが、ずっと楽だ。

「あぁんっ、ッふ、ぅ、ああ゛ッ...!」

「気持ちいいの、覚えてき。志麻のこと抱くつもりなんやったら。ほらここ、前立腺♡」

「うっ、アッ」

「あと、ここ。奥ぐりぐり〜ってするとな」

「うっうぅ」

「めっちゃ締まるんよな。俺のセンラがなぁ、抜き差しするより、奥圧迫される方が気持ちいいって言うてたけど、どうなん?」

「あ〜〜ーッ♡ううぅ......♡」

「顔やばい♡とろっとろやな♡」

「見んなしっ、ほんまにやばい、からぁ...っ♡」

「大丈夫や、センラやったら全部興奮するから♡」

「なんなんそれっ、そういうの、ちゃうやろ...!」

本当にこの男は。顔を背けて腕で隠せばやんわり振りほどかれて首の後ろに回される。

自分よりでかい男抱いて、グチャグチャの顔見て興奮するとか。ほんま物好きやと呆れてしまう。

「イキすぎやろ、そんな敏感で、ほんまに志麻のこと抱くつもんなん?」

「ちゃう、これ、俺のからだちゃうし...!」

「メスイキとか乳首はたしかに開発したけどな、俺のセンラは元から敏感やったなぁ」

「そうなん......?」

敏感体質ではないと思っていたのに。ああーこの世界の俺がそうだったってだけやろなどうせ。突かれるたびに奥を締め付けて絶頂してなんて、あり得ないんやから。

「ほんまに志麻のこと抱くつもりやったら、もっと快楽に強くならんと」

「う.........」

「そんな簡単にびゅーって射精しとったら、早漏やってそっちの志麻に呆れられてまうよ。」

「たし、かに...?」

「射精、我慢する練習しような♡」

一定の速度で奥をコンコン突かれながら前を扱かれた。びくりと跳ねた俺の体の具合を見て、彼の手が俺の根本をぎゅっと掴んだ。

「今度は、センラが腰動かしてみて。」

「な、なんで...?」

「練習になるやろ。それに...タチなんやったら、お尻で志麻を満足させてみてや」

こんな意地悪をしてくるなんて。信じられへんとせっかちな性が対抗心を燃やす。尻で抱くという言葉があるくらいだ。タチならタチなりの意地を見せなければ。

「上等やし!」

そう、啖呵を切ったのはいいが。取り繕うことも難しいほど、俺の体は完全に屈服していて。

「う、んうぅっ!」

「かんばってー、もう、腰抜けてもうてるやん」

寝そべった彼の上に跨って、かくかく腰を振って意図的に締め付けて。男目線でこれ絶対気持ちいいやろ!と彼を攻め立てている気分に浸れたのは一瞬だった。

勢いに任せていられた最初と違って、腰が、立たない。動かさなくても気持ちいいってどういうことや。
太さと硬さのある彼のものをきゅっきゅと締め付けているだけでイッてしまいそう。

俺が腰の動きを止めれば、自身を扱く手が再開する。
イきすぎて赤くなった敏感なそこは攻め立てられると辛い。

「まーしぃ、いく、いくから...っ!」

「んー?だめやろ」

「ぁ、ああ゛ッ!突くの、やめてぇ♡」

「センラが動かんから」

ぬちぬちと粘着質な音がして、悪戯に腰を突き上げられ不意打ちに弱い体が悲鳴をあげる。
イキそうになれば射精を封じられて頭がおかしくなりそう。

メスイキを繰り返している。射精を封じられた自身は可哀想に腫れ上がり、ぐるぐると不快感が玉の中を巡っているのを感じる。

「いやぁぁっ、も、おわりにしよ...?むりや、ぁっ、うう゛ッ〜〜〜♡♡」
 
「なぁんでや。きもちよさそーやん」

「だしたい、だしたいから...っださせて...?」

「うん。わかったで」

「...!ほんまに」

「もう少しだけ、我慢の練習をしてからな」

優しい声で、絶望の淵に立たされる。快楽攻めに精神的に追い詰められていた俺は、ズンズンと奥を突かれながら、息も絶え絶えに癇癪を起こす。

「そんなん!嫌やぁっ、はよ出したいねん、まぁしぃ、意地悪しんといてやぁ、もうしんどいねんて...!!」

我慢?そんなんせんでいい。俺が抱かれるのもこれっきりやし、付き合ってられん......と心の中で毒付いた瞬間に。

「俺のセンラやったら、我慢出来るのになぁ」

恋人失格、と言われてしまった気分だった。別に気にする事ないのに、胸の内に嫌なモヤモヤが広がっていく。

一瞬見開いた瞳から、目の淵に溜まっていた生理的な涙が、一粒こぼれ落ちた。

「もう、嫌や.........」

「センラ...?」

「お願いやから、センラの話、しんといて...!」

「え?」

「俺やってセンラや!おれのせんらって、なんやねん!そんな比べられたないし、俺の前で別の男の話、すんの、最低やからな...っ!うぅ゛ッ〜」

「え、せんら...?」

「いま、まーしぃが抱いてるのは、俺やろ!!『まーしぃのセンラ』やない!!!」

言いたいことは伝わるだろうが、言い分はごちゃごちゃ。勢いだけで喋ってるのが丸わかりだ。
確かに、『俺の志麻くん』は可愛いし、大好きやけど。俺を抱いているスパダリ志麻くんも好きだった。

愛されたい、俺だけを見て欲しい。目の前を志麻くんは何も悪くないのに。俺のわがままでしかない。

同じセンラやとしても。「俺のセンラは」「俺のセンラやったら」と比べられたくなかった。

いっぱいいっぱいになって、自分に嫉妬して涙する男にも、彼は優しい口付けを送ってくれる。

「自分に嫉妬したん?かわい」

「んっ、うるさい......!」

「ごめんごめん。比べてるつもりはなかった。俺はセンラならなんでも好きやから。勝手が違うから、意地悪しすぎてもうたみたいや、ごめん」

「ん...」

「はじめてなのにな。こんなに自分から腰ふって気持ち良くなれて、すごいで。俺も気持ちいい」

「...ごめん、俺泣いてまうてほんまにきもい、もうええからっ」

「全然キモくない。あーー、これも、比べてるとか言われたら謝るんやけど。センラが泣くの珍しいから、そういう一面見れて嬉しい。甘やかしたくなる」

「んぅ、また比べた...最低や」

「ちゃうちゃう!ごめんってぇ!あぁ、目ぇ擦らんとき。腫れちゃうからな?」

拗ねてみれば、慌てたような態度になるのが面白い。俺自身、あんまり泣かへんけど。こっちのセンラもそうなんかな。

また比べられて癪やけど、こっちもセンラも見せへんらしい涙で喜ぶなら、まぁ...トントンかな。

年上のお兄ちゃんモードに入っているらしく、甲斐甲斐しく涙を拭ってくれる。俺が落ち着くまで顔中に唇が振ってきて、なんかもう色々と馬鹿馬鹿しくなる。

「もう、意地悪しぃひん...?」

「うん」

「ちゃんとイかせてくれる?」

「もちろん。ごめんな、お詫びっていうか...最後にもう一つ、気持ちいいの覚えて帰って欲しい」

「ん、んぅ?なに?」

涙が止まった後、唐突に思い出す腹の中のそれ。もう意地悪しないって言ってくれたし、何やるんやろと俺は甘ったるい声色で問いかける。
俺を押し倒した彼は、優しい男が決してしないギラついた瞳をしていて。

「ここ、結腸って、言うんやけど。」

「結腸ぉ...?」

「俺も久しぶりにここまで突くからえぐいかも。はぁーー、ここまじで締め付けやばいんよなぁ...♡」

「結腸...?そんなん入るわけないやん、内臓やし、普通に危ない、やろ...?うっ、まっ、待ってほんまに?」

「いく、でェッ!!」

あ、これやばいやつや。

そう脳が理解すると同時に、腰に指が食い込むほどぐっと強めに掴まれていて。次の瞬間、めりめり奥を割り裂かれる感覚。

俺の自身からびたびたと透明な液体が噴水のように飛び出して、シーツが水浸しになる。

「ぅ、あ゛、〜〜〜〜〜〜〜ッ?!♡♡♡」」

そこからは記憶がない。


薄らと浮上した意識の中で、力強い腕に抱かれ、髪を優しく撫でられた感触だけを感じた。

「......センラ?もしかして飛んでる?」

「まー、しぃ」

「結腸きもちかった?意識飛んでまってかわいいな」

「おっき、ぃ」

「ん?」

「ぁっ...あ......、ちんぽ、きもちええ...」

「気持ちいいの、知ってまったのにな。タチなんやろ?勿体無いわ」

俺自身も知らなかった、体の奥底まで攻め立てられるのがこんな狂ってしまいそうになるほどの快感だなんて。未知の領域だった。

「こんな気持ちいいセックス知ってもうたら、物足りないんやろな。センラ、敏感なのに勿体ない」

しかし、もう、知る前には戻れない。

「そっちの俺と、仲良くな」

そっと、幸福感に包まれて瞼を閉じた_____



次に目を覚ましたのは、新しい朝だった。

毎朝設定していた定時刻のアラームで目を覚ませば、同じベットの中で不安そうにこちらを見る彼の姿がある。

......あれ?昨日は最後、どうなったんやっけ。

「センラ?」

「ぅ......まぁし?」

「センラ。あんたは...俺のセンラ?」

「...ん〜?」

その質問で確信した。

俺は、元の世界に戻ってきた。
そして、俺が意識だけであちらの世界に迷い込んでしまった際に、入れ替わりで別のセンラがこの体を動かしていたらしい。

カレンダーを見れば、時は前の時間軸のものに戻っていた。

「昨日な、センラ様子おかしかったんやで?数ヶ月後の未来のセンラやって言ってな。出会い頭に、俺のこと押し倒してきよんねん」

「そ.........っそれで、志麻くんは抱いたんですか?」

ネコになってる世界線の俺がどんなんか分からんけど。もし抱いてたら嫌やなぁと思った。俺より先に、俺の志麻くんの体を知ることになるわけやし。

なにより未開拓の俺の体が知らない間に喪失しているのは......うん、嫌やな。

「いや。ずーっと断り続けて、折れてくれた。その間、数ヶ月後のセンラといっぱいお話ししたんやけどな」

「はい...」

「俺な、色々教えてもらったねん。センラが思ってることとか、して欲しいこととか、触られたらキモチイイところとか」

「え、ええぇ......?」

「誓って、本番はしてへん。口頭で教えてもらっただけだから、信じてな?...あーー、ちょっとだけ、目の前で実践してくれたけど。俺からは指一本触れてへん」

「う、うん?そうなんかぁ。ふ、ふーん?」

この男、夜王の称号に見合わずに誠実すぎる。

それなのにこっちはガッツリ抱き潰されているわけで、後ろめたすぎる。入れ替わったのが意識だけだったので、俺の体は処女のままなんやけど。

ホッと息を付いていれば、志麻くんが俺の方ににじり寄ってくる。

「センラのペースに合わせようと思ってたんやけどな。受け身のままじゃだめなんやなって、思って、俺」

情けなくも朝勃ちしてしまっている愚息に彼の手が触れる。

語尾に音符が付きそうなくらい嬉しそうに「反応しとる」と呟く彼を朝やからしゃあないやろ!!!と突き飛ばしたくなった。

そういうわけには、行かないのである。俺自身、諦めの感情も持ち合わせていて。

「教えて貰ったこと。ひとつずつ、試してみてええかな?」




恋人がいつもに増して攻めっぽい


どうやら、今度こそ貞操の危機の様です。

設定とゆるく補足

センラ

自分のことはタチだと思い込んでいた。そのため、smsnの世界線に紛れ込んでしまったと勘違いしているが、シンプルに数ヶ月後の自分と中身が入れ替わっただけだった。数ヵ月後にはネコの才能を見事開花させる未来を辿るとか辿らないとか。

志麻

センラと付き合ってから、初夜の機会を伺っていた。もちろん抱く気でいるが若干のヘタレを拗らせているため、優しいが決定力に欠ける。数ヶ月後のネコセンラさんにせっつかれ、とうとう一歩踏み出す。いずれは同じ未来を辿ってセンラさんの体を変態調教しているとか。

「え、こっちの俺とまだシてへんの?うわぁ〜溜まってるやろ?可哀想に。俺のこと抱いてみぃひん?初夜の初々しいまーしぃほんま懐かしい」

「や、俺は、俺のセンラ一筋やから。あんたには悪いけど、抱かへんし触らんから」

「えぇ〜?真面目やなぁ。ふふ、まーしぃそういうとこ誠実やもんね。ええよ、なら...触らんでええから、そこで見といて?」

「えっ、やっ無理やって!俺は浮気せんし...!」

「見るだけやったら浮気にならんよ。嫌やったら見なくていいから、な?」

「いや、だめやろ...?」

「あぁんっ、まーしぃ、俺な?ここ弄るの好きやねんっ♡」

「ッーーーーーー?!?!」

以下、ガン見する。

顔を手で覆いながらも指の隙間からガン見する。そのうち腕を組んで身を乗り出して鑑賞し始める。
まじで指一本も触れないが、たくさんやらしいことを教えてもらって耐性がついて、後ほど吹っ切れる。

「まーしぃから触ったら浮気やけど、俺から触る分には浮気ちゃうよな?」と謎理論で迫られるが、鼻血を噴き出して辺りが血まみれになったので強制終了する。

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